【連載コラム】 テレワーク時代の受注オーダーマネジメントシステム再構築の成功の鍵(6)

Our OMS

縦割りシステム構造によるデータのサイロ化からの脱却

前回までは、DX時代・テレワーク時代に向けた「受注オーダーマネジメント業務のあるべき姿」について考察してきました。
最後のテーマである第6回では、DX推進の阻害要因となっています「データのサイロ化」からの脱却について考察します。

尚、本テーマでは、情報系システムではなく、SCM・ロジスティクスに関する業務系システムの「データのサイロ化」を対象といたします。

「サイロ」とは、穀物・肥料・セメントなどを貯蔵する塔状の倉庫のことを指し、貯蔵庫としてのサイロは、穀物の腐敗を防ぐため気密性に優れています。ここから転じて、組織間の情報共有や風通しが悪くなり、組織運営が非効率な様を「サイロ型」と表現するようになりました。

そして、業務プロセスやシステムなどが他のアプリケーションやサービスなどと連携することなく、実際のサイロのようにデータが縦割り組織の個別システム毎に分散し蓄積されている状態を「データのサイロ化」と呼びます。

1. 「データのサイロ化」に至った背景と課題について

代表例は以下の通りです。同様の課題にお困りではありませんか。

◆ 事業部ごとに業務内容が様々で、各部門が勝手にシステムを増やして収拾がつかない

・マスターデータが複数のシステムに存在している
・多数のシステム間のデータのやり取りをするために、複雑な社内ネットワークを構築する必要がある

◆ 数十年前のオフコンをベースにシステムを増強してきており、現状では継ぎ接ぎの基幹システムから統一されたデータ集約が困難

・度重なるプログラムのコピーを重ねた結果、機能の重複やデータの重複が深刻であり、異常処理の多発と原因究明の困難化を招いている

◆ 複雑な取引・物流条件を取り扱う業務で、既存ERPでの運用が困難なため担当者に知見が集中している

・ERPシステムは主に確定データを管理することを目的としているため、未確定の予定データ(予定在庫や需要など)がほとんど管理の対象外で、
業務遂行上やむを得ず個人別のExcelなど手作業で別管理しており、それらのExcelデータが多数のデータサイロ化となっている
・在庫管理は担当者毎にExcelで管理しているため営業倉庫の在庫状況を一元的に把握できていない
・業務が属人化、且つ複雑化しており、簡単に業務代行することができないため、締め期間等、業務量が増えても応援等を行うことができない

◆ M&Aによりシステムが複数になっている

・事業会社単位で別々のシステムを利用しており、同一商品であっても別管理を行っている等データサイロ化されており、在庫管理の運用に非常に
手間がかかっている
・事業会社や各種業務毎にサーバーが立っているシステムインフラ環境であり、システム維持コストや新たな業態が追加した場合のシステムコストが
大きな課題

2.マスターや在庫管理、受発注業務の統合化・一元化に向けた現状認識

上記のように「データのサイロ化」には様々な要因がありますが、大きくは起因によって整理できます。

サイロ化の起因 対象業態 主な理由
商品カテゴリの拡充 商社・卸、メーカー 事業の多角化による異業種・異商品群への参入などにより、M&Aによる専用システムが追加もしくは取引条件・物流条件が異なることによる専用の業務システムを構築
得意先業態の拡充 商社・卸、メーカー 量販店、CVS、専門店、商社・卸、ネット販売などの得意先業態による取引条件・物流条件が異なることによる専用の業務システムを構築
チェーン業態の拡充 外食チェーン 新規業態開発により、M&Aによる専用システムが追加もしくは新規業態システムを構築

 以上のことから、「データのサイロ化」の大きな要因は専用システムの追加・構築にあり、その方法として、

1) M&A会社のシステムを流用
2) 既存システムのコピー&改修
3) 新規システム構築
4) 現場対応によるEXCEL、ACCESS利用(部分的パッケージ利用含む)

などがあり、データベースも個別システムでクローズされた状態となっています。

すなわち、事業からの要請によりスピード・コストが優先されて、現実の業務をトレースしただけのシステムデザインとなっており、結果的に「似て非なるもの」として柔軟性のないサイロ化状態に陥ってきています。

では、「統合化・一元化」の良い方法はないのでしょうか。

3.「統合化された業務運用デザイン・業務プロセスのシステム化」の考察

外食チェーンの課題事例からの考察

複数ブランドを展開している外食チェーン企業は、各々のブランド・業態毎にSCM・ロジスティクスの業務システムがあり、いわゆる縦割型の組織運営および業務運営となっています。その業務を担うシステムは、当初開発したシステム(機能)をブランド毎に焼き直して使いまわしといったことが散見されます。
また、M&Aによりグループ会社となった場合、業務システムは既存のシステムを継続利用しているケースがほとんどです。
しかし、業務コストやシステム維持コストは高負担になっています。
シナジー効果を生み出すための業務基盤となる業務システムが必要です。

在庫管理も個別管理となっており共通食材があったとしても縦割り業務体制のために全体でみると過剰在庫になってます。また、物流コストもムダなコストが多く発生しており、その多くの根本原因は現実をトレースした「似て非なる」業務システムにあるといえます。

それでは、複数ブランド・業態の業務プロセス、業務オペレーションについて考察してみましょう。

現状では縦割りの業務構造となっていますが、業務機能的には同じ業務プロセスと考えられます。
(【図1】 複数ブランド・業態の業務オペレーションの統合化を参照)

すなわち、「似て非なる」部分の業務オペレーションはどういうことなのかを突き詰める必要があります。
今までのコラムで、全体俯瞰した業務オペレーション視点でテーマ化(第2回~第5回)してきましたが、これらを踏まえて統合化業務オペレーションのデザインをしてみてはいかがでしょうか。

【#2コラム】モノの流れの見える化
【#3コラム】時間軸の在庫管理
【#4コラム】業務オペレーションの見える化
【#5コラム】アナログ業務のデジタル化

今まで縦割りであった複数のブランド・業態毎の業務オペレーションを「モノの流れの見える化」、「時間軸の在庫管理」、「業務オペレーションの見える化」、「アナログ業務のデジタル化」の視点を踏まえて業務デザインすることができれば、適応力の高い共通業務基盤による「データの一元化」が実現できます。

【参考事例】
■ 株式会社吉野家ホールディングス 様 SCM・物流システムの再構築事例

<ホワイトペーパー>
■ 吉野家ホールディングス様の「グループ商品システム(SCM・ロジスティクス)再構築プロセス」からの考察
吉野家ホールディングス様のプロジェクトの構想企画段階から導入展開に至る業務プロセス&システムの再構築プロセスを考察したホワイトペーパーです。「データのサイロ化」の克服内容も含まれています。

上記の外食チェーンのモデルケースの「複数のブランド・業態」を、商社・卸、メーカー視点では「商品カテゴリ」、「得意先業態」に置き換えて考えていただければ、同様の課題が克服できます。弊社では、多数の実践事例があります。

4.連載コラムの結び

受注オーダーマネジメント業務は、基幹システムの制約により現場部門に様々な負担がかかっているのを多く見受けられます。

一方で、経営課題としてDX推進プロジェクトを立ち上げ、組織横断的な活動をされている企業が増えています。
そういった中で、DX時代、テレワーク時代における受注オーダーマネジメント業務の自動化やデータのサイロ化からの脱却等の課題をどのように解決できるか、弊社が20年以上培ってきました業務知見および実績を踏まえ、業務担当者視点からの「OMS業務オペレーション基盤のTo Beモデル」をベースとして業務要件を考察する連載コラムといたしました。

連載コラムのコンテンツが、貴社の受注オーダーマネジメントシステム(OMS)刷新のお役に立てれば幸いです。
ありがとうございました。