【連載コラム】 テレワーク時代の受注オーダーマネジメントシステム再構築の成功の鍵(3)

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時間軸の在庫管理

前回は、「モノの流れの見える化」のテーマで、物流ネットワーク上の「モノの流れ」を時間軸と空間軸で描写<見える化>することの重要性を考察しました。
それを踏まえて、今回は、「高度な判断情報のJust in Time化」の視点から「時間軸の在庫管理」を考えてみます。

将来に向けた経営戦略の一環として、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進している企業が急激に増えています。
SCMやロジスティクスの分野で、今までIT化、デジタル化が遅れていた業務領域へのDX推進プロジェクトといった戦略的活動(価値の創造)に着手しています。

本コラムでは、DX推進の第1ステップとして「テレワーク時代の受注オーダーマネジメントシステム再構築」を位置付けており、取引条件や物流条件といった複雑・煩雑な業務プロセスを整理し、段階的に業務運用の標準化の精度を高めていくためにも「時間軸の在庫管理」が重要な成功の鍵と考えています。

さて、現実を顧みますと、レガシー・一般のERPのシステムでは、業務担当者が属人的な手作業で「受注オーダーを完遂するための対処」をタイムリーに遂行するよう努力し続けています。

テレワークでの業務遂行を実現するためには、業務担当者から「在庫の確認」や「入荷予定の確認」、「在庫引当の正確性の確保」といった作業を解放してあげなくてはなりません。

そのためには、ダイナミックに変化している状況を、「的確な判断情報」として業務担当者にタイムリーに提供する必要があります。

では、「的確な判断情報」とはどういうことでしょうか。

  1. いつ出荷可能かどうか(どの配送便に間に合うかどうか)、出荷倉庫への入荷予定も含めた利用可能な在庫数が日時単位でわかる

    【利用可能在庫数の算出例】
    ※ 業種や取引条件によっては、時刻単位での業務運用は必要ない場合もありますので、その場合は「日次」や「午前・午後」といった粒度に置き換えてお考え下さい。

    図1 物流ネットワークでの時刻ベースのモノの流れ

    表1 図1の出荷倉庫の利用可能在庫計算

    ※ 利用可能在庫については、【正確な在庫引当て(ATP在庫引当て)】https://www.fw-solutions.com/theme-solution/sc10をご参照ください。

    つまり、本日出荷希望の追加オーダーが来た場合、15:00以降の出荷便で150個までなら受け入れできることが瞬時にわかります。
    受注(新規、追加、変更、キャンセル等)や入荷予定(輸送便延着、出荷先トラブル等)、出荷予定(緊急受注出荷、在庫管理ミス、等)のイベントが発生し、ダイナミックに変動したタイミングで利用可能在庫を再計算し、受注オーダー完遂の異常がわかれば、問題解決も的確・迅速に行えるようになります。

  2. イレギュラー処理は、Just in Timeでの利用可能在庫数によって判断されており、広義での「時間軸の在庫管理」が
    整備されていなければならない

    「時間軸の在庫管理」が必要なのは、(現実のモノの流れ)≒(システムが計算した論理的な結果)にするための基本的な手段だからです。
    したがって、精度の高い時間軸の利用可能在庫を計算するためには、表2の時間軸に関する基本事項(例)も加味しなければなりません。

    一般的なWMS(倉庫管理システム)では、実在庫での引当やピッキング・出荷管理はできますが、予定在庫を含む時間軸での在庫管理は対象になっておりません。
    業務担当者がシステムに期待しているのは、現実を投影した「Just in Timeでの高度な判断情報」を提供してくれる受注オーダーマネジメントシステムです。
    そのための第1ステップとして、物流ネットワーク全体での時間軸の論理矛盾が無く、利用可能在庫が把握できる在庫管理の仕組みづくり(表1モデル)から進めるべきではないでしょうか。
    システムからのアウトプットが現実と乖離していますと、業務担当者はシステムを信頼できなくなり、再び属人的な手作業に戻ってしまうことでしょう。

    今後、「物流企業の物流DX」が加速度的に進展する勢いですので、今までできていなかったリアルタイムでのモノの流れのデータが利用できるようになります。
    これらのデータを利用した「時間軸の在庫管理」が実現できれば、予定在庫の精度が高くなり、日時ベースでの利用可能在庫の引き当て精度も上がります。
    結果として、ムダのない在庫活用やそれに伴う在庫圧縮が可能になり、更には納品率も高まり顧客満足度も向上します。すなわち、「価値の創造」に結びつきます。
    「高精度の時間軸の在庫管理」の実現に向けて考えてみてはいかがでしょうか。

    次回は、テレワーク時代を⾒据えた「業務オペレーションの⾒える化」について考察します。