【連載コラム】 テレワーク時代の受注オーダーマネジメントシステム再構築の成功の鍵(4)
業務オペレーションの見える化
前回までは、「モノの流れの見える化」と「高精度の時間軸の在庫管理」について考察し、ダイナミックに変化している状況下での調整業務や緊急対応などのイレギュラー処理には、「Just in Timeでの利用可能在庫を知る」ことが必要不可欠な解決策であることを取り上げてきました。
(1)コラムテーマと課題 https://www.fw-solutions.com/column/our-oms/3245
(2)モノの流れの見える化 https://www.fw-solutions.com/column/our-oms/3270
(3)時間軸の在庫管理 https://www.fw-solutions.com/column/our-oms/3298
そこで今回は、レガシーシステムや一般のERPのシステム(以下、現基幹システム」という)で業務運用されている、業務担当者の属人的な手作業から「業務オペレーションの見える化」について考えてみます。
現基幹システムでの受注・出荷の業務運用では、現場サイドでのEXCELもしくはACCESS等を利用した現場補助システムの存在が多く見受けられます。ほとんどが、在庫引当・配分および出荷・配送の手配業務に関するものです。
賞味期限・有効期限のある商品や複数の倉庫を扱っている場合などは、更に複雑なマクロ計算や関数を駆使して作られています。
また、担当営業部署のミッション(量販店、問屋・卸、チェーン店舗、専門店、通販、加工メーカー等)によって取引・納品条件が大きく異なっており、個々の例外処理を含めると業務フローは複雑かつ煩雑なため、従来の業務フローをシステム化する手法では設計者スキルとコスト面から現基幹システムに反映することを断念してきたと思われます。
したがって、現場補助システムは標準化されているものではなく、部署毎あるいは担当者毎に個別に存在しています。
そういった中で大きな課題は、現場補助システムの維持・管理です。維持・管理のスキルをもった担当者の配置転換や退職といった人事面での問題により業務の混乱は避けられません。
したがって、このような業務環境の中では、「テレワーク推進」は非現実的といっても過言ありません。
では、どのようなアプローチが必要なのでしょうか。
1.受注オーダーマネジメント業務のあるべき姿
受注オーダーマネジメント業務は、「事務処理」ではなく「お客様へのサービス提供業務」と視点を変えてみませんか。
すなわち、お客様から頂いた受注オーダーをご希望通りの条件で納品を完遂するためのサービス・オペレーションであり、オペレーショナル・エクセレンス(オペレーションを競争上の優位性に高める)としてビジネス付加価値を創出する業務と位置づけてみます。
すると、このような目標設定(業務のあるべき姿)を明確にイメージすることにより、今までとは違う課題が見えてきます。
例えば、お客様からのオーダー・要求・問合せ・トラブル等に対して、
- 対応がミスもなく正確に行われているか [確実性・業務精度]
- 対応が迅速にタイムリーに行われているか [スピード・タイミング]
- 対応が丁寧で共感を得ているか [共感性・コミュニケーション力]
- 対応に継続性・再現性が保たれているか [信頼性・継続性]
- 対応に必要以上のコストが掛かっていないか [効率性・ムダ排除]
といったような「オペレーションの品質を見える化」することを考えてはいかがでしょうか。
「業務オペレーションの見える化」とは、2つの側面があり、
(1)日常のオペレーション品質を維持するための支援
(2)オペレーション品質の改善活動
と考えます。
2.受注オーダーマネジメント業務における日常のオペレーション品質を維持するための支援
「モノの流れの見える化」および「時間軸の在庫管理」により物流ネットワーク全体での時間軸の論理矛盾が無く、利用可能在庫が把握できる仕組みができますと、物流ネットワーク上で発生する様々な状態の変化(イベント発生)を捕捉することにより、それをきっかけとして自動的に利用可能在庫を再計算・再確認できます。
(イベント発生例:新規受注、受注変更・キャンセル、倉庫の入出荷・入出庫、在庫修正、輸配送便変更、など)
そうすることにより、特定の日時での利用可能(予定)在庫の変動が出荷・納品予定にどのような影響がでるのかがタイムリーに把握できます。
【図1】は、オペレーション品質を維持する支援の弊社の仕組みの一例です。
異常(予定外の事象)を自動点検してアラート(警告)を発出し、再手配(再引当・出荷指示変更、顧客連絡通知、等)を担当者に促します。
この他にも、入荷待ちの受注オーダー(受注残)があると、この時点では利用可能在庫は不足している状態ですが、入荷実績のイベントが発生すると自動的に利用可能在庫の引当てが可能になり、担当者に通知してくれると忘れたままの状態ではなくタイムリーかつ迅速、正確に対応ができます。
このような支援ができる仕組みのベースは、「Just in Timeでの利用可能在庫を知る」に帰着します。
3.オペレーション品質の改善活動
オペレーションの品質改善のマネジメントとして、まずPDCAのCheckの現状把握からスタートしなければなりません。しかしながら、伝票処理件数や受注明細数などの業務量・生産性に関心はあるものの、オペレーションの業務品質となると?(はてな)マークがつきます。
では、「業務のあるべき姿」の実態を把握するために、どのような視点が考えられるでしょうか。
【図2】は、弊社が考える生産性分析のサンプルです。
受注オーダーの引当から出荷手配、横持ち移動手配等の自動手配と手動調整手配、再手配といった中から自動化率をチェックします。
自動手配率が多いほど生産性が高い訳ですので、手動調整や再手配の原因を分析し改善することによって省人化に結びつきます。
【図3】は、欠品(販売機会損失)分析のサンプルです。
出荷日時のタイミングで利用可能在庫がなかった(欠品)時に、どのような対応をしているかの分析です。
部署毎にも見える化できると原因の特定が早くなり、在庫適正化や納品率、顧客満足度に結びつきます。
更に、顧客別に対応分析ができると、取引規模や欠品・条件変更による影響などの把握・分析により、よりきめ細かな営業活動を支援することができ、共感性・信頼性を増強することに結びつきます。
4.DX時代、テレワーク時代に向けた受注オーダーマネジメントシステム(OMS)の方向性
以上のような、
(1)日常のオペレーション品質を維持するための支援
(2)オペレーション品質の改善活動
のための「業務オペレーションの見える化」ができるとしたら、事務処理の生産性の視点ではなく、ビジネス付加価値の創出の視点に変わるのではないでしょうか。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、スウェーデンのウメオ大学教授であるエリック・ストルターマン氏が2004年に提唱した概念で、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」と謳われています。
また、2018年に経済産業省が公表した定義には、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と具体的に提唱されています。
これからのDX推進の中で、受注オーダーマネジメントシステム(OMS)の再構築をご検討される方々には、是非とも「高度な判断情報のJust in Time化」を念頭に、「高精度の時間軸の在庫管理」をベースとした業務革新のための業務システムをご検討されてはいかがでしょうか。
DX時代に向けて、オペレーショナル・エクセレンスを目指しませんか。
次回は、「アナログ業務のデジタル化」について考察致します。