【連載コラム】 テレワーク時代の受注オーダーマネジメントシステム再構築の成功の鍵(1)
はじめに
現在、コロナ渦の中にあってテレワークへの移行が緊急・重要課題となっており、アナログ業務からデジタル化(DX)への転換が急務となっています。
「脱紙文化」としてFAXでの受注や出荷・配送指示等の取引業務の見直しによるWeb受注やRPA導入などを当面の対策として検討・実施されておられるものと思います。
一方で、「2025年の崖」や「SDG’s対応」、「BCP対策」といった中・長期的な視点や事業戦略の一環として「物流オペレーション」を戦略的競争軸の位置づけとする物流オペレーションの高度化・効率化計画などを踏まえて、レガシーシステムの再構築を根本的にご検討されておられる企業様もいらっしゃると思います。
今回、これらの背景および課題を持たれている企業様に向けて「テレワーク時代の受注オーダーマネジメントシステム再構築の成功の鍵」をテーマとして連載コラムをスタートすることと致しました。
1.業務対象領域
本連載コラムでの「受注オーダーマネジメント業務」とは、下図の業務担当者の守備範囲をイメージしています。
すなわち、自社の受注・出荷体制の全体を俯瞰し、商品の供給ルートや各物流拠点への輸配送の状態を踏まえた「モノ」の流れを把握して、得意先からの受注オーダーを納期通り納品を完遂するためのコントロール業務です。
2.主な課題とコラムテーマとの関連性
現行の業務システムでテレワークが遂行できるかどうか、受注・出荷体制の物流規模や業務規模によって一概に断定することはできませんが、業務システムの制約により不連続の業務プロセスになっていることが大きな阻害要因となっております。
つまり、システムの制約により不連続になっている業務を人間がExcel利用や手入力でつなぎ・補完して全体の業務が成り立っている状態といえます。このような業務状態では、テレワークでの業務遂行は困難と言わざるを得ません。
また、受注オーダーマネジメント業務については、多様かつ複雑な取引・納品条件や受注・出荷体制における業務システムの機能不足による制約がテレワークの大きな阻害要因となっています。
あるべき姿としてシンプルに考えると、得意先が入力した受注データ、取引先が入力した商品データや物流データを全て再利用し、自社でのイレギュラー処理を含む業務運用ロジックを整理して、一気通貫の高度な業務システムを構築することにより業務は自動化が進み、人間は重要な判断業務に注力することができます。
連載コラムでは以下の「一気通貫の高度な業務システムの構築」のための重要なテーマを考察していきます。
【コラムテーマと課題】
コラムテーマ | 課 題 |
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(1) モノの流れの見える化 | ・ ダイナミックなモノの流れを全体俯瞰した、予定・実績の入出荷時刻を正確に把握できていないために、 タイムリーに正確な納品予定が組めない。 ・ 物流オペレーションが全体最適の効率的な運用ができていない。 ![]() ・ 「モノの流れの見える化」は、受注オーダーマネジメントシステムの基盤となるテーマである。 |
(2) 時間軸の在庫管理 | ・ ダイナミックに変化するモノの流れをとらえた各拠点の予実在庫が正確に把握できていないために、 失注や欠品、在庫過剰、ムダな物流コストを発生させている。 ・ モノの流れを踏まえた特定の時刻(時間軸)における利用可能在庫を算出し、最適化した在庫引当を リアルタイムに導き、タイムリーに納期回答もしくは出荷・配送指示を行うには全体俯瞰した 時間軸の在庫管理」が不可欠である。 |
(3) 業務オペレーションの見える化 | ・ コロナ渦にあって、調整業務や緊急対応などのイレギュラー処理による業務担当者の負荷が 増大しており、また、イレギュラー処理が属人化しているために、ヒューマンエラーによる 顧客満足度低下、物流コスト・業務コスト増大、社員満足度低下を招いている。 ・ 今後は、イレギュラー処理に対する業務システムの支援が不可欠であり、 イレギュラー処理の自動化/半自動化を実現する必要がある。 ・ テレワーク時代を見据えた重要なテーマである。 |
(4) アナログ業務のデジタル化 | ・ タイムリーなデータ取り込み・反映ができていないため一気通貫・自動化の阻害要因となっており、 全体の業務スピード・正確性を著しく低下させている。 ・ 自社独自の様々な業務運用ルールや個別対応などの属人化したアナログ業務を業務運用ロジックとして 見える化する必要がある。 ・ ICT関連のネットワーク環境やセキュリティ確保といったシステム基盤の整備および自社の目指す姿の業務 運用にマッチしたツール選定をする必要がある。 |
(5) 縦割りシステム構造による データのサイロ化からの脱却 |
・ 過去の事業拡大等の変遷により、事業毎・部門毎といった個別のシステム機能の追加・改造といった拡張 を繰り返し、今となっては在庫や輸配送、業務配置等の 最適化を阻害するシステム構造・データ構造に なっており、事業スピードの足を引っ張り、無駄な業務コスト、システム維持コストを生じさせている。 ・ データのサイロ化から脱却するためには、統合化された業務デザインからスタートし、結果として 統合化・一元化されたデータベースの構築を図る。 |
【目指す姿とコラムテーマとの関連性】
レガシーシステム | 目指す姿 | コラムテーマ | |
---|---|---|---|
変化への対応 | 静的・スタティック | 動的・ダイナミック | ・ 全テーマ |
システム処理特性 | バッチ・集計処理型 | Just In Time処理型 | ・ モノの流れの見える化 ・ 時間軸の在庫管理 ・ 業務オペレーションの見える化 ・ アナログ業務のデジタル化 |
業務処理特性 | 不連続 <システム&手作業> |
連続 <一気通貫自動処理> |
・ モノの流れの見える化 ・ 時間軸の在庫管理 ・ 業務オペレーションの見える化 ・ アナログ業務のデジタル化 |
イレギュラー業務 | 人間での調整対応 | 自動/半自動処理 <イレギュラー発生通知> |
・ 時間軸の在庫管理 ・ 業務オペレーションの見える化 |
データ構造 | サイロ化 | 一元化 | ・ 縦割りシステム構造によるデータの サイロ化からの脱却 |
次回は、「モノの流れの見える化」について考察します。